3月11日から1週間ほど前の福島第二原子力発電所。中央制御室のシミュレーター。子どもたちに向かって,あたかも,原発が,数人のエリート達によって運転・制御されているかのように教育しています。悲惨な原発労働者の存在など,まったく消し去って説明は続きます。311以降のこの時点で見直すと,ブラックジョークというところでしょうか。いや,こんなのは,いいかげんにしてくれ!
2010年末,子供が小学校から鮭の卵(イクラって言う?)を持ち帰って来ました。これをふ化させるのだというのです。そして新年になって,そのうち東京近郊の多摩川にでも放流するのかと思っていたところ,2月下旬になって,「原子力発電所見学とサケを放流する会」という案内が回ってきました。場所は,多摩川ではなく,福島県楢葉町の木戸川というところです。そこまで,東京電力がバスを出してくれるというのですが,もう,これは仕組まれた原発洗脳教育だったわけです。
子供は,せっかく育てたサケの放流に行きたいと言うし,奥さんからは「そんなところに行ったら被曝する」と言われるしで,けっきょく,私と子供が一緒に行くことになったんですが,いや,こんなものに参加しちゃいけませんね。私もこの時点で,まったくの認識不足。しかし,体験後,こんなバスツアー,二度とやらせてなるものかと思っていたら,1週間後に,向こうが自滅したという話です。いや,理不尽なことに、未だに東電は潰れていないんですがね。
この日,バスに乗り込むと,さっそく東京電力のおねえさんが洗脳教育を開始します。なにしろ,片道3時間以上かかるのですから,時間はたっぷりです。当日はしかし,小学校のみんなもいるし,日頃のクレーマー的発言は止そうと思っていたんですが,一つだけ,石油依存をやめてウラン燃料に利があると説明するのに,石油産出国が集中するアラブは「政情不安エリア」だと言い出したのには,さすがに,頭に来ました。
だって,そんな紋切り型を子供たちに押し付けるから,世界中のみんなと友達になれないんじゃないですか。私の父親なんて,テレビばっかり見ているから,もう,「アラブ人ってのはすぐに戦争するんだ」と言って憚らないのですから(いや,その「アラブ人」って言われている人たちに戦争しかけたり,武器を渡して煽っているのは,「日本のお友達」と自称して,沖縄に居座ったりして,さらにお小遣いをねだっている,あの人たちじゃありませんかぁ)。
この点,バスを降りても抗議したら,同じく楢葉町にある東京電力のエネルギー館の前で,今度は,おねえさんに代わっておっちゃんが登場し,「テレビでも,アラブは政情不安って言ってるだろ」「そんなこと言うのはアンタだけだ」と,まあ,今度は,ヤクザまがいの脅しです(念を押しておきますが,産油国とウラン産出国を比較して,どっちが有利なんて言えないでしょう?)。
そして,その後,いよいよ第二原発敷地内に向かうわけですが,そのバス中,ガイド役のおねえさんは「今年は福島原発稼働40周年で記念の年なので,見学来場者10万人の目標を立てましたが,もう,3月の時点でその目標を達成してしまいました」とかナントカ,数字の記憶に自信がないのですが,とにかくそんな話をするわけです。
でもねえ,それって,僕らみたいに,東電が準備したバスに乗って,タダでやって来た人たちなんだろうから,そんな手前味噌な話って,専制国家のTVアナウンサーが語る夢物語と一緒です。とはいえ,それが,この後に続く人権蹂躙と情報統制の世界の入り口になろうとは。いやはや,これは夢であってほしい…