2015年6月7日日曜日

ウェブカメラ,ライフキャスティングのツール

 ノエルを批判する者たちは,ほぼ同様に「自己顕示欲」という言葉を使う。しかし,ネットに登場することが,即,「イケナイ自己顕示欲」でしかないのなら,これは,そのまま批判者たちにお返ししておこう。
 多くの場合,誰が,どのような目的で使用するかも分からない監視カメラには,無批判に,いくらでも自らの姿をさらし続けている(吸い取られている)にもかかわらず,自らのコントロールでその姿を公開する行為に対しては,ほとんど人権侵害の勢いで批判の声を浴びせるというのは,相当に歪んだ考え方ではないか?
 それも,ノエルは,配信を通して常にテキストチャットに反応し,コメントにも積極的に返信している。他者と関係を持ち続ける行為に「自己顕示欲」はあたらない。

 2015年2月以降,ノエルがライブ配信で利用することになった「アフリカTV」のウェブサイトを開くと,誰が見ているとも知れない多くの配信に出会うことができる。たった今現在も,車を運転中らしい女性,介護用ベッドの前で一生懸命タブレットの機能を説明しているおじいさん,また,自宅で筋トレ中の人物などなど,どれも視聴者1人か0人の状態。
 こうした行為には,すでにウェブキャスティングという言葉もあると思うが,この国で映像メディアといえば,放送局から「大衆」に向けての,放射状のマスコミ的コミュニケーション形態しか共有されていないから,なんでも「自己顕示欲」にされてしまうのだ。

 ほとんど,英語版Wikipediaの「Webcam」の内容をなぞってしまうことになりそうだが,とりあえず,ここで「Lifecasting」の流れをおさらいしておきたい。もちろん,ノエルの行為はライフキャスティングだ,ということではないが,同じ映像メディアであっても,様々なコミュニケーションのスタイルがあるということに気付いてほしいのだ。

●前史
 日本でインターネットが一般に利用されるようになったのは,最初に1993年11月にIIJが,次いで,1994年にベッコアメ,リムネットなどが消費者向けのサービスを開始して以降である。当時,TCP/IP接続を確立し,ウェブ・ブラウザをインストールしたら,まず,誰もがアクセスしたサイトの一つに,イギリス・ケンブリッジ大学のコンピューター研究所に設置された「Trojan Room coffee pot」がある。
 コーヒーポットが映し出された,まるでちっちゃいモノクロ画像が,一定時間に更新されるという質素なものだが,当時,ネットを通してリアルタイムの画像が確認できることに,多くの人たちが魅力を感じていたのだ。

 Trojan Room coffee pot (Wikipedia英語)
 http://en.wikipedia.org/wiki/Trojan_Room_coffee_pot

 The Trojan Room Coffee Machine
 https://www.cl.cam.ac.uk/coffee/coffee.html
 

 この映像は,研究員がコーヒーを飲もうとポットのところまで出かけると,すでに空になっていたという事態を避けるため,LAN上にコーヒーポット専用の監視カメラを設置したものだ。それが,1993年には,このシステムがインターネットに接続されたため,世界中の人たちが,この,ケンブリッジ大学の誰かが飲むであろうコーヒーを,せっせと眺めることになった。そもそもが,利便性を求めた行為であり,その後,同様の発想は,リモート操作のコーヒーメーカーに限らず,家電や監視カメラ全般に及ぶことになる。

 「世界一有名なコーヒーポット」から15年
 http://blogs.itmedia.co.jp/kenjiro/2008/03/web-8550.html

 モノのインターネットの源流
 http://wirelesswire.jp/2014/09/16756/


 しかし同時に,多くの人々が,自らとはかかわりのないコーヒーポットをせっせと眺めていたのだ。ある瞬間に,誰かが注ぐであろうコーヒー。それも,何千キロも離れた場所にあるコーヒーを眺める行為。これは,利便性とはまったく関係のない詩的な行為である。また,実用性の点では,研究所内のLANに限定された画像配信で十分なので,これをインターネットに繋いだケンブリッジ大学の誰かさんも同様である。


●ウェブカメラの誕生
 そして1994年,コネクティクス社のQuickCamというマッキントッシュ用のウェブカメラが発売された。これが,いわゆるウェブカメラの始まりだろう。まだUSB接続ではなく,シリアルポート用のカメラで,320×240ピクセルの解像度で,もちろんモノクロだ。主にCU-SeeMeなどのヴィデオ会議用として販売されたものだ。

 Webカメラ (Wikipedia 日本語)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/Web%E3%82%AB%E3%83%A1%E3%83%A9
 ※多くの場合,日本語Wikipediaの記述は情報が少なく,ことの一面しかとらえられていない場合が多い。

 Webcam (Wikipedia 英語)
 http://en.wikipedia.org/wiki/Webcam
 ※QuickCamやJenniCam項目へのリンクがある。


 CU-SeeMe (Wikipedia 英語)
 http://en.wikipedia.org/wiki/CU-SeeMe


●ライフキャスティングの始まり
 その後まもなく,各社からUSB接続のカメラが発売されるようになった。高価な設備が必要とされたテレビ会議がすぐに,閉ざされたサークルのテレビ電話やヴィデオ会議ではなく,「Trojan Room coffee pot」のように個人的な配信に利用する行為も広がった。その対象はペットや風景だけでなく,ノエルが常にそうしているように,自らを。中でも一番注目されたのは,数年間に渡って自らを配信し続け,マスコミにも登場するようになったJenniCamのジェニファー・リングレイだろう。


 Lifecasting (video stream) (Wikipedia 英語)
 http://en.wikipedia.org/wiki/Lifecasting_%28video_stream%29


 Jennifer Ringley (IMDd Internet Movie Database)
 http://www.imdb.com/name/nm1478850/?ref_=nmbio_bio_nm

 Jennicam: Why the First Lifecaster Disappeared from the Internet (GIZMODO)
 http://gizmodo.com/jennicam-why-the-first-lifecaster-disappeared-from-the-1697712996

 ウェブカメラを利用した配信用ソフトには様々な方式があり,無料で簡単に入手できる。{自宅配信」をした者は少なくないはずだ。とくに,ウェブカメラで撮影した映像を,一定周期でレンタルウェブサーバーに転送するタイプは敷居が低く,ウェブページを公開できる環境があれば,簡単に,自らをあのコーヒーポットのようにすることができた。


●ソーシャルネットになったライフキャスティング
 また,創設者のジャスティン・カンが,自らの身体に装着した小型カメラで24時間の配信をすることから始まったライブ配信サイトJustin.tvは,2007年10月に一般公開され,多数のユーザーを集めた。この時点で,ライフキャスト,ライフキャスティングという言葉が広まった。Justin.tvは,その後,ゲームストリーミング専用サイトへと展開した。なるほど,ゲーム配信もまたライフキャスティングの流れの中に置くことができそうだ。


 Twitch、ライブ動画サービスJustin.tvを閉鎖 (ITmedia ニュース 2014/08/06)
 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1408/06/news051.html

 Justin.tv
 http://www.justin.tv/
 ※現在は,閉鎖のメッセージなどが残されている。

 twitch
 http://www.twitch.tv/

2015年6月4日木曜日

ヴィデオアートはマスコミ批判の対抗運動だ

 「ヴィデオアートの父」と呼ばれるナム・ジュン・パイクは,1978年,交換留学生としてモスクワで映像制作を学んでいたディミトリ・デヴィアトキンとともに,「メディア・シャトル:モスクワ/ニューヨーク」を発表した。当時,東西が対立しているとされた冷戦下で,もし,ニューヨークとモスクワの人々が一種の市民バンドのテレビチャンネルを持ち,人工衛星によってお互いを見て,そして話をすることができたなら何が起きるだろうか?,そんな発想から作られた28分11秒のムービー作品である。
 Media Shuttle: New York - Moscow (Vimeo)
 https://vimeo.com/25594961

 Electronic Arts Intermix : Media Shuttle: Moscow/New York
 http://www.eai.org/title.htm?id=575


 マスコミが一方的に放出する情報は一つのプロパガンダである。しかし,同じテレビシステムであっても,構築方法を変えることで,異なる機能を持たせることができるはずだ。

 パイクはその後,1984年になると,近未来の管理社会を描いたジョージ・オーウェルの小説「1984年」にちなみ,「グッドモーニング・ミスター・オーウェル」と名付けたイベントを開く。ニューヨーク・パリ間を衛星回線で結び,ヨーゼフ・ボイス,マース・カニングハム,ジョン・ケージといった芸術家らとともに,ローリー・アンダーソン,ピーター・ガブリエル,トンプソン・ツインズなどのポップスターを登場させた。また,1986年には,ニューヨーク・ソウル・東京(テレビ朝日)を,やはりサテライト回線で結んだ「バイ・バイ・キップリング」を実施し,これには坂本龍一らが出演している。なお,キップリングは,「東は東,西は西」の言葉で知られるイギリスの小説家である。

 Nam June Paik - Good Morning Mr. Orwell (1984)  (YouTube)
 https://youtu.be/SIQLhyDIjtI

 
 VIDEO ART 1984 -1(Video Art 1984より) (YouTube)
 https://youtu.be/hKP0DgwRzyU
 
 VIDEO ART 1984 -2(Video Art 1984より) (YouTube)
 https://youtu.be/avNAYfFwQs4
 
 VIDEO ART 1984 -3(Video Art 1984より) (YouTube)
 https://youtu.be/DhX0ajY8jZI
 ※これらは,日本語コンテンツである

 
 グッドモーニング ミスター・オーウェル、1984から2014まで(イム・サン)
 (「Koreana - Winter 2014 (Japanese): 韓国の文化と芸術」より)
 https://issuu.com/the_korea_foundation/docs/koreana_winter_2014__japanese_
 ※p.30以降に「グッドモーニング・ミスター・オーウェル2014」展の紹介記事がある
 
 衛星による国際市民チャンネルの試みは,ここで現実のものとなった。パイクは既に,1965年,当時登場したての家庭用ヴィデオカメラとレコーダーを購入し,その日のうちに,初めてニューヨークを訪問したローマ法王パウロ6世の乗った車を撮影し,すぐに,その映像をグリニッジ・ヴィレッジの"Cafe au Go Go"で上映したと伝えられている。これは,ヴィデオによる最初の独立メディアと言えるだろう。

 さらに遡って,1963年のヴッパータール(独)における最初の個展では,信号が乱れたテレビ映像を展示,次いで1965年頃には,テレビの電子ビームを磁力によって歪め,「美しい」模様を作り出すことに成功している。その後,1969年から71年にかけて,阿部修也とともに「パイク=アベ・ヴィデオ・シンセサイザー」を完成させることになる。これらはすべて,マスコミによる一方的な押し付けTV映像に対抗し,これに「介入」する試みと見なすことができる。ヴィデオアートは,その誕生から,一方的に押し付けられるマスコミを批判する対抗運動なのである。

 "Exposition of Music - Electronic Television" Nam June Paik (1963)
 http://www.medienkunstnetz.de/works/exposition-of-music/video/1/
 ※ムービーあり


 Participation TV
 http://www.medienkunstnetz.de/works/participation-tv/images/1/

 Magnet TV
 http://www.medienkunstnetz.de/works/magnet-tv/

 Edited for Television (1975) (UbuWeb)
 http://ubu.com/film/paik_edited.html
 ※1975年にN.Y.の公共TV局WNET/Thirteenが制作した番組,開始直後にMagnet TVが登場し,21分50秒以降にはパイク=アベ・ヴィデオ・シンセサイザーのプロトタイプが紹介される


 Paik, Nam June; Abe, Shuya "Paik/Abe Synthesizer"
 http://www.medienkunstnetz.de/works/paik-abe-synthesizer/
 
 阿部修也 インタヴュー (ICC HIVE インタヴュー・シリーズ 04)
 http://hive.ntticc.or.jp/contents/interview/abe

 An Evening of Paik-Abe Synthesizer with Mr.Shuya Abe 阿部修也さんとパイク・アベ・シンセの夕べ(2013) (YouTube)
 https://youtu.be/CwHgUy0kpHA
 

ナム・ジュン・パイクの仕事全般については,他にも多くのムービーがYouTUbeなどで視聴できる。

 Nam June Paik | TateShots (YouTube)
 https://youtu.be/5RE1ueYnSVc

 YouTubeのNam June Paikチャンネル(#ナムジュンパイク)
 https://www.youtube.com/channel/UCKv4Tcv7Ij6DDoyiotwCGRA


 バイ・バイ・キップリング (松岡正剛の千夜千冊)
 http://1000ya.isis.ne.jp/1103.html


 Nam June Paik (1932-2006) (UbuWeb)
 http://ubu.com/film/paik.html
 ※現代芸術のムービー・サウンドのアーカイブ,ここでも複数のパイク作品が閲覧可能

 Nam June Paik Art Center
 http://njp.ggcf.kr/

2015年6月3日水曜日

ドローン規制,ご都合主義のマスコミ

 ドローンは危険だから,法の有る無しに関わらず,規制や取り締まりが必要と言う意見がある。ノエルの行動を規制する立場の意見だ。ただし,ここは法治国家だ。まして,それが警官の行動ならば,法律をはみ出して市民に手出しをしてはならない(とは言え,ありもしない嫌疑で「逮捕」というのは,常に,デモなどで発生しているのも事実!)。

 この間,マスコミは,警察に不当逮捕されたノエルを悪者にして,勝手な報道を繰り返してきた。しかし,とにかくドローンは危険なものだから飛行させてはならないというのなら,この間,マスコミ自身が提出したドローン規制緩和の要請は,どのように理解すればよいのだろうか。

 (報道発表)小型無人機「ドローン」の規制に対する意見(民放連 2015/05/28)
 http://www.j-ba.or.jp/category/topics/jba101501

 「ドローン」規制法案 日本民間放送連盟、自民党側に申し入れ(FNN 2015/02/27)
 http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00293345.html
 ※このページは削除されている
 
 民放連、ドローン規制「強く憂慮」 自民に申し入れ(日経 2015/05/27)
 http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG27HAO_X20C15A5CR8000/

 民放連 ドローン規制法案に申し入れ(日テレNews24 2015/05/27)
 http://www.news24.jp/articles/2015/05/27/04275970.html

 ドローン規制法に「強く憂慮」 民放連が申し入れ(ITmediaニュース 2015/05/28)
 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1505/28/news148.html

 
 民放連の報道発表では,ドローン規制法案の「対象施設周辺地域が広範囲に及ぶことについて」反対の意見を示している。これは,明らかにマスコミが市街地でドローンを飛行させたいという意思の現れなのだが,法律がなくとも警官がこれを取り上げ,規制すべきものであるとするなら,ドローンは,とにかく危険な代物という認識のはずだから,おかしな話ではないか。むしろ,「“無秩序状態”を前提に広範囲に規制をかける動きは、妥当性を欠いていると考え」るのなら,ノエルに対する警官の行為も,同様に「妥当性を欠いている」と報道すべきではないか。

 また,ドローン飛行に関して,「報道、学術、設備点検、測量、映像制作など国民の利益に資する正当な業務」と「テロなどの違法行為」があるとしている。例えば,趣味の領域など,そもそもどこにも無いという物言いで,そのおかしさに困惑してしまうが,この裏には,「報道」を業務とする専門家と,その他,何もしない「一般の人」という認識がある。だから,業務以外は犯罪行為になるという理屈である。かつて,近未来の超管理社会を描いたジョージ・オーウェルの「1984」の世界のようだ。

 これまた,ノエル批判の言説で,「報道人」と「一般人」であるノエルは異なる立場なのだという,報道における身分制の認識を示している者がある。一般の,というのは,つまり,我々すべてのことなのだが,それは何もしない存在ではない。積極的に行動して表現するのは,憲法にも示されている通り「当たり前」である。テレビやラジオなどの電子メディアにおいても,市民が情報発信の手段を持つ権利は,いわゆるパブリックアクセス権として,ネット時代のはるか以前から広がっている。ノエルの配信は,これを一人で成し遂げてしまった。警察もマスコミも,第二第三のノエルが現れたら,それこそ既得権を失うことになる。脅威の出現に,自らも変化して対応すればよいものを,古い体質をむき出しにして若者に襲いかかっている姿,見苦しい限りではないか。


「逮捕された、ノエル君の釈放を求める」署名のお願い(Change.org さゆふらっとまうんど 2015年5月25日)
http://chng.it/m9N5fLrhX5
※キャンペーンは終了している

日本にはドローンを所持しているだけで警官に拘束される場所がある

●ノエルは合法を目指す
 ノエルが逮捕され,勾留期間は既に2週間だ。彼の活動はオンラインで行われ,(不当にも)威力病無妨害とされる行為は,配信公開されていたから,証拠は既に揃っているはず。そもそも「威力業務妨害」というあやふやな嫌疑で,これほどに長期間拘束される理由はない。これはまさに警察による私刑である。ノエルの心身状態が心配である。

 ノエルは,常に合法のラインで行動しようとし,また,相手にもそれを求めている。それに対し,警察は,身分も明かさず,行動の根拠・理由も示さず,違法な対応を繰り返している。法を守って行動するように求めるノエルの態度を「騒動を起こした」などと言うのは,完全な間違いだ。

 目前の警官に対し,その身分を確認すること,その行動の理由を確認すること,さらに自らに対する警察の行動の意味を確認し,また,不当な行為を拒否することは正当な行動である。これを否定してしまえば,この国は,人権を否定し,民主主義の国ではなくなってしまう。それは「いつか来た道」である。


●警官の横暴
 2015年5月14日,この日ノエルは,江戸城の高さから見た景色を配信すべく,条例でドローン飛行が禁止された都立の公園をわざわざ避けて,衆議院が管理するという憲政記念館前庭の洋式庭園にいた。ここでドローンを飛ばそうとして「保護」(補導)されたとマスコミは報道しているが,それがいかにおかしな(不当な)ものであったのかを,ノエルの配信で見てほしい。

 ドローン:今度は憲政記念館近くで 「善光寺」15歳聴取(毎日新聞 2015/05/14)
 http://mainichi.jp/select/news/20150515k0000m040007000c.html

 ※「きょうの切り抜き帳」サイトによる記事の引用掲載
   http://netmo.seesaa.net/article/418986251.html

 なお,ノエルが利用していたアフリカTVなどの配信サイトの映像は,記録が消えて視聴できなくなっているが,ノエル公式サイトからリンクのあるYouTubeの「ノエル放送局」のムービーは,今でも確認できる。
 ノエルの大ファンの一人,粉川哲夫が指摘する通り,彼の配信は,チャットが重要な位置にあるので,本来の配信内容を確認するには,まさにライブを体験するしかないのだが,丁寧にもチャット画面が合成されたムービーも示されている。これを頼りに追体験してみたい。なお,ファイル名には通し番号も付けられているので,比較的検索は容易である。14日の一件は,【1140】と番号が付けられたムービーに収録されている。

 ドローンと「不敬罪」 (2015/05/22) (粉川哲夫の「雑日記」)
 http://cinemanote.jp/diary/20150418-.html#201505220410

 ノエル放送局(YouTube)
 https://www.youtube.com/user/SEIYAch
 http://urx2.nu/pGnJ

 【ノエル】ネット少年 ドローンを置いたら落とし物扱いされた FlyInTOKYO【ニコ生】【1140】
 https://youtu.be/b4Gt9yGuqwE
 ※動画が削除されているが,下記の引用動画などを視聴できる
  【ノエル】 ドローンを取られてオコ!【ノエル】VS【警察】
  (YouTube  Bas Fromチャンネル -niconicoより- 2015/05/23)
   https://youtu.be/G4xDp63lGxo

 ※下記は,ニコニコ動画で引用掲載されている
  【ノエル】 ドローンを取られてオコ!【ノエル】VS【警察】(ニコニコ動画 2015/05/20)
   https://www.nicovideo.jp/watch/sm26297566

 ムービーを見ると,ノエルが配信を開始して間もなく,おそらく,彼がドローンを地面に置いた途端,突如,あらかじめ彼を監視していた警官がノエルのドローンを取り上げたものと思われる。その場面自体はアングルの外だが,「触るのやめてもらえますか」と叫ぶノエルに対し,警官は「これ,落ちていたもんだから」という,あり得ない言い訳をしている声が聞こえてくる。まさに,ムービーのタイトル通り「ドローンを置いたら落とし物扱いされた」わけである。

 警察のこうした違法な「取り締まり」は常態化しており,小説やドラマでも「別件逮捕した」といったセリフで表現されることがある。だが,これは許されることではない。どんな場合でも,基本的な人権を守った上での捜査や取り締まりが求められる。

 さらにムービーを視聴して行くと,「お願い」と言いながら飛行禁止を「強制」し,正当な理由を説明できない警官の聞くに堪えないセリフにと行動に付き合うことになる。強調しておくが,お騒がせなのは警官の方だ。
 そして,4分50秒あたり,警官がカメラのレンズを手で覆い,これから,映像に残っては不都合な行為を始めるという合図のようにも思える。「勝手に撮影してるんだろ?」「何の権限があって撮影している」という警官の声も聞き取れる。どうやら,この国では,ムービーを撮影するにも,官憲の許可が必要になってしまったようだ。

 とうとう5分30秒頃には,カメラの接続が警官によって切られてしまう。5分50秒あたり,配信画面は消えて音声のみの中で,「任意ですか?」「任意です」「じゃ断ります」というやり取りの次に,「ご協力をお願いします」という警官の声がしたと思ったら,その言葉とは裏腹に,無理やりノエルを「保護」しているように聞こえる。
 その後は,6分10秒あたり,「管理者から持ち込み禁止と言われている」だの「撮影禁止」だの言いたい放題だ。この,警官たちによると,ドローンへの規制は,法律が発効するその前に,「所持自体」も拘束の理由となってしまっているらしい。

 その後,ノエルは,とうとう拘束(「保護」)された警察車両の中から配信を継続する。この場合,「保護」なのだが,拘束された警察車両内部からのライブ配信は本邦初公開なのではないか?

 【ノエル】ネット少年 警察手帳を見せない警官(車内にて)【アフリカTV】【1148】
 https://youtu.be/_Y8SvwLFL-0
 ※下記はニコニコ動画に引用掲載されているもの
 【ノエル】ネット少年 警察手帳を見せない警官(車内にて)(ニコニコ動画 2015/05/29)
  https://www.nicovideo.jp/watch/sm26367647


 不法行為に抵抗するのは人として当たり前。ノエルは未熟な子供であり大人の教育が必要だとする意見もあるが,ノエルの言葉を聞くと,彼がルールを調べて発言しているのが良く分かる。若者に対し,法に基づく理由をきちんと説明し,説得できないのは大人の側ではないか。この国の未来は暗いと言うほかない。


「逮捕された、ノエル君の釈放を求める」署名のお願い(Change.org さゆふらっとまうんど 2015年5月25日)
http://chng.it/m9N5fLrhX5